2022年11月初め、陶器市の益子を離れて、台湾桃園市大渓へ。オンラインだけの交流だった「勝手姉妹郷(民間での勝手に姉妹都市協定)」、ついにリアル対面交流です。その訪問記を、帰国後にヒジノワで開催した報告会後に、まとめたレポートの紹介を。。。
2021年からご縁が繋がり始め、地域の風土と資源を大切に、古建築や木藝・工藝を活かしたまちづくりを進める桃園市大渓区の皆さんとの交流がスタートしています。その「経緯」については、このサイトの過去記事をご覧ください。
click>台湾桃園市大渓区 大渓工藝週DAXI CRAFT WEEK への招聘・参加について
益子から大渓へのリアル訪問の記録を(ヒジノワのウェブにはアップしていましたが、こちらではまだだったので、記録のために、こちらでも一部修正・加筆してアップしておきます。写真は、簑田撮影+Chouse提供。
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2022年11月 益子から大渓へ———————-
2022年11月に開催されたイベント「大渓工藝週 DAXI CRAFT WEEK」(博物館主催、企画運営:Chouse)に来ませんか?と、Chouseの陳さんから打診があったのが、たしか、春から初夏へ季節が変わる頃。ヒジノワ立ち上げからの仲間、陶芸家の鈴木稔さん(と潤子さん)、そして同じく立ち上げからの仲間で、古建築の大渓を尋ねるならこの人!という星居社主宰の高田英明さんに声をかけ、4名で大渓へ! 参加させていただいたクラフトウィークのメイン企画を順に紹介します。
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(1)打開工場(オープンファクトリー)
大渓区で、鍛冶や木藝の工房、製材所などを地図やパンフレットをもとに見学して回ることができる企画です。
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①千祥打鐵店
②木彫・得山坊
③添富木業社
④協大木器行
(2)工藝市場(クラフトマーケット)
11/5.6に「ヒジノワ」ブースで参加
ヒジノワゆかりの作り手さんたち18名にお声かけして出品いただきました。
陶芸:鈴木稔・船越弘・谷島潤・松永玲美 染織・服飾・木工小物:藍染 わらたに・nociw・CASANE・yayami・kiito・AOTUKI・星居社 ポストカード・その他:飯山太陽・廣瀬俊介・「ましこのうた」 食/加工品・YURURi・わたね・泉’sBakerly・ゾーファンチィ
(3)交流座談会
11/4 木藝生態博物館にて開催。双方から相手への記念品や参考作品も展示、また持ち寄った食べ物や飲み物も並べられた会場で、工藝に町の地域振興やコミュニティのことなどを壇上で語り合い、会の最後には、姉妹郷の締結を宣言! 地元のメディアも多く取材に入っていました。
協定宣言の文章は、1枚目写真の真ん中のボードに記載されているのですが、ここにも日文で記しておきます。
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台湾の「大渓」と日本の「益子」は、日台友好の愛と信頼に基づき、相互の交流を図り、太平洋地域の共同繁栄を目指し、宇宙に夢と希望に満ち溢れた明るい未来を創造するため、「勝手な姉妹郷」を結ぶことを合意する。
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ヒジノワで大渓訪問記の報告会を開催
ヒジノワの関係者に、メーリングリストで呼びかけて、帰国後の11月18日に報告会を開催しました。私たちが大渓で、見て、学んで、交流させていただいてきたことを、多くの写真を投影しながらお話をしました。大渓のパンフレットや、購入してきた博物館発行の本なども、自由に見ることができるように並べ、参加のみなさんは、興味深そうに、手にとったり眺めたりしていました。
参加の皆さんが書いてくださった「感想」と、現地へ行ったメンバーの感想を合わせて、大渓の皆さんへ、お礼のレポートとして(日本語・中国語:繁体字の併記で。訳は通称リンちゃん)お送りしました。後日、とても嬉しい!とお返事が。ここまで丁寧にやりとりを重ねることで、交流も深まると確信!
最後の、お礼レポートに掲載した簑田の感想を紹介します。
Chouseと博物館のみなさま、街の皆様のあたたかいおもてなしを思い出しています。初めてのイベント期間中で、とてもお忙しい状態だったと思いますが、そんな素振りは見せず、いつも笑顔でもてなしていただいたこと、感謝の気持ちでいっぱいです。オンラインで2回、あとはメッセンジャーでのやりとりだけでしたが、本当に古くからの友人のように感じさせていただきました。このご縁を大切にしていきます。
日本の「地方創生」を参考に、台湾でも2019年が「地方創生元年」として位置付けられて、各地域で地域の歴史や資源を生かした地域振興の動きが加速している。・・・これは、2020年の1月に、イーピンさんと待ち合わせて観に行った、渋谷ヒカリエで開催されていた「2020台湾地方創生展」の資料に書かれていましたし、ネット記事でも見聞きしていたことです。今回の大渓訪問で、あらためて強く感じたことは、「いや、逆に日本の諸地域は、台湾の地方の動きにこそ、学ぶべき」ということです。「なぜ、そう思えたのか?」について、滞在中の感想を交えながら、記しておきます。
◎自分たちの地域の風土への尊厳と理解
行政(桃園市大渓)も民間も、地域振興のベースに、地域の風土(歴史・地理・文化・生活)の理解があり、だから、ブレがないし、しっかりとした軸があると思えました。地域の風土の理解を、市民にも観光客へも広めていく役割を担っているのが、大渓木藝生態博物館なのだと思いますが、ホームページも、出版物(定期刊行物『一本大渓』、『風土渓望-The Prospect of Daxi Living』)も、博物館で行われている様々な教育や文化振興の事業も、徹底した強さを感じています。
◎在るものを有効に活用する
風土への理解や経緯があるからこそ、古い建物を取り壊して新しい建物をつくるのではなく、大渓木藝生態博物館も老街も、在るものを保存し、整備して活用しているのですね。
また、短期間の滞在でしたが、大渓工藝生態博物館は、地域の人たちに開かれている場所になっていると感じました。建物群をつなぐランドスケープも、とても自然な感じで、ベンチに座って、お弁当を食べていると親しい親戚や友達の庭にいる様な気がしましたし、また、公園の様でもありました。エリア全体が、誰に対しても「ウェルカム」と言っているようです。そんな地区で育つ子どもや若者たちは、地域で大切なものは何か、本質的なところで理解ができる大人に育つと思います。
◎行政も民間も、まちづくりの仲間という意識
大渓でのオープンファクトリーや老街エリアを案内していただいたとき、陳さんが、様々な人を紹介する際に「まちづくりの仲間」という表現を使われていたのが、印象的でした。工芸を生業にしている人の工房や、それらを展示販売する店舗などに「街角館」の木の看板がかかっていました。そこには、桃園市が発行する骨太の月刊広報誌『桃園』(無料配布)や博物館のチラシなども置かれていて、博物館の分館の様でもあり、まちなかでの情報発信や交流の拠点となる案内所の様な役割を果たしているのですね。
また、陳さんは、こうもおっしゃっていました。「この街角館の取り組みは、3年間で市からの助成が終わるので、その後、民間で自立する仕組みを作りたい。また次の助成金ができるかもしれないけれど、それは新しいプレーヤーに譲りたい」という考えは、自分の代の仲間に固執せず、街に新陳代謝を起こすことを考えているようで、とても参考になりました。
◎有機的につながる、景観と建物と事業、そして、ひと。
その結果、更新されてゆく大渓の風土。
振り返ってみると、総じて、大渓の地域振興、まちづくりというものは、歴史的建物群を活かし、地理的・歴史的な風土を生かし、歴史ある木工という工藝を大切にし、そこにつながる農業と食文化や教育などが、とても有機的にリンクしあっているように見えました。その成果として、今後、おのずと観光の面でも盛り上がってくるのではないでしょうか。
また、その有機的な繋がりの上に、陳さんが率いるChouseのように洗練されたクリエイティビティが高い人たちの活動が活発になることで、大渓の風土は良い方向へ更新されていくのだと思います。
最後に、オープンファクトリーで最も印象的だった「協大木器行」で伺ったお話を伝えます。店内に入って印象的だったのが、製作された神棚が塗装をしていない無垢のまま置いてあること。その理由は「お客さんには、どれほど立派な木を使っているかを見てもらって、ヒビや亀裂が入っていないことも確認してもらう。それで納得して買ってもらうことに価値を置いているから」とのことでした。商談が成立したら、その人の名前を彫って、それから塗装をして仕上げていくそうです。木の質はもちろんのこと、木を扱う秘術にも自信を持っていらっしゃるのでしょう。また、経営については、「家族プラス2、3人の職人で経営していて、職人にきちんとお給料を払うために良いものを作り高く売ることを意識している」とのことで、「我々がやるべきなのは、イケアのようなものを作るのではなく、我々でしかできないことをやること」ともおっしゃっていました。
これらのお話は、地方創生の良い例と悪い例の比喩のようだとも感じています。良質なものではないのに、よく見せるために表面だけ塗装をして、見た目を整える・・・。他の地方で成功すれば、自分たちがすべきことではなくても、自分の地方でも真似したがる・・・。そんな地方創生、地域振興がまかり通らないように、これからも大渓の皆さんとしっかりと学びあって交流を深めていきたいものです。