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勝手姉妹郷プロジェクト⑶
FRIENDSHIP CRAFT WEEK
「花火と多年草」考

台湾桃園市大渓区の皆さんとの交流事業、昨年秋の益子から大渓への訪問に続き、この5月に「フレンドシップ」の旗印のもと、大渓から益子へ、ご一行をお迎えすることができました。まだ、その幸せな余韻の中、その「勝手姉妹郷プロジェクト第3弾」報告を・・・。

最初に、少し復習になりますが・・・
民間どうしで、勝手に自主的に姉妹都市協定を結んで交流を進めよう!というプロジェクトは、日本と台湾を繋ぐ記者としての活動の傍ら、千葉大学の大学院で日本の地方創生とローカルデザインを研究していた(今は福岡に拠点を移しで日台の交流&工芸や地域振興のお仕事中)蔡 奕屏(ツァイ・イーピン)さんの発案で、台湾のローカルカルチャーマガジン『地味手帖』誌上とのタイアップのプロジェクト。私や益子、ヒジノワとのご縁については、過去のブログをぜひ。
click>勝手姉妹郷(1)
イーピンさんや『地味手帖』については、ソトコトオンラインの田中佑典さんの連載にも登場しています。こちらもぜひ。
click>ソトコトオンライン「台日系カルチャー第2章に向けて」
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オンラインでの交流から、ようやく対面での交流へ!という機会が、昨年2022年11月に桃園市大渓区で開催された「大渓工藝週DAXI CRAFT WEEK」への参加(招待)訪問でした。その模様は、過去ブログでどうぞ。
click>大渓工藝週訪問記
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さてようやく本題です。
大渓に訪問させていただいてからずっと、「今度は益子に来てもらいたい。とはいえ、大渓の場合は、桃園市立の木藝生態博物館の主催事業(Chouseが企画運営)への招待だったわけで、益子の弱小民間人(私たち)に一体、どんな企画とおもてなしができるのやら・・・・」と悩みながら日々が過ぎ・・・。
しかし、過去に「自主企画ツアー:大人の夏休み」「はじまりのローカル コンパスへの企画と運営協力(栃木県)」なども手がけてきたヒジノワですし、何より、民間の有志の、財力も任意の集まりで、地域コミュニティの場を13年間も運営してきている、私たち。なんとかなるさと、プランニングを始めて数ヶ月。なんとかなりました、笑。ヒジノワのメーリングリストからの実行委員募集の呼びかけに応じてくださった皆様、他、企画にご協力いただいた町内外の皆様、ありがとうございました。
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◎告知ビジュアルデザイン:佐田祥毅さん(ヒジノワ初代組長)
◎勝手姉妹郷ヒジノワ実行委員会
鈴木稔・高田英明・鈴木潤子・簑田理香+尼子久乃さん・伊藤奈菜さん・高田慶子さん・高田純子さん・寺山泰代さん・船越弘さん・船越節子さん・古川光太郎さん・南口 馥さん
+通訳協力:アンナさん・宇賀神さん・早瀬友貴さん +企画協力:濱田庄司記念益子参考館・starnet・日下田藍染工房・陶庫さん・仁平透さん・古川潤さん・craftyさん・佐藤敬さん+わたね さん
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今回のプログラムは、単に、益子のヒジノワ有志と大渓の皆さんの交流や視察ではなく、一般参加の方も共に楽しみ交流できる企画をメインに組み立てています。その3本柱を写真で紹介します。

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期間限定特設ストア「DAXI STORE@益子」
2023/0512-0522  会場:MINORU’S W&P HOUSE

Chouseの衣服ブランド「茶衫:cha-shan」を中心に、茶碗袋、コースター、とてもセンスの良い多色展開のエコバッグ、大渓の古建築(老街)のファサードにちなんだ絵文字の刺繍、パスポート カバーを展示販売。
また、私たちが大渓でいただいたり、買い求めてきた、桃園市の広報誌や博物館の出版物などの閲覧コーナーも設置しました。
初日から「この建物が気になっていた!」という町内の方や下野新聞を見て・・という町外からのお客様などがきてくださり、大渓チームが19日に益子についてからは、店舗内でも交流しながら、良い場が生まれておりました。
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この建物は、2年前に完成していた鈴木稔さん個人のもの。奥のコーナーで作陶の仕事をしながら、自身の作品を展示販売する、という構想で作られたものの、コロナ禍となったこともあり休眠状態。当初、今回の特設店舗はヒジノワスペースで想定していましたが、こちらを思い切って活用し、初披露も兼ねては?と稔さんに提案し、ご快諾いただいた次第。
建築は星居社。代表・高田英明さんの、材の使い方から細部まで素晴らしいディレクションが随所に光ります。また、什器(引き出しのショーケース)は、コウノストモヤさん(笠間市)。ガラスを支える鉄のパーツは、新田真紀さん(芳賀町)。お二人とも、見惚れる素晴らしいお仕事です。早くも、次は?と店舗活用への期待が高まっているようです・・・ね!

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益子参考館にて
「民藝と風景を読み解くフレンドシップ・ツアー」
5月20日に開催。大渓の7名と一般公募の5名の方。
講師:濱田友緒館長と廣瀬俊介さん(環境デザイナー)

この企画の趣旨は、タイトルの通りです。民藝(単なるコレクションではなく、活動/運動の集積の場としての参考館)と、風景(風土と人間の相互関係性の集積で目の前に現れているものとしての風景)を、感じ取り、読み取り、散策しましょう、という時間です。一般参加の方々も、ともに楽しんでいただけました。
写真の1枚目と5枚目は、台湾で作られた麻の袋。濱田庄司氏が愛用していたものだそうです。とても丈夫で、今でも使えそうだし、細部の工夫も素敵でした。Chouseの若いスタッフも手にとってよく見ておりました。

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講演会 講師 Chouse主宰 陳美霞さん
「大渓に学ぶ、風土に根ざした創造性あふれる古建築と木藝のまちづくり」
5月21日 starnet ZONE
通訳:廖 瑞宜(リャオ レイ)さん

講演会 :写真撮影は、Chouseスタッフによります♡

当日は、定員30を超える参加者の方々にお集まりいただき、(数日前に実行委員会で室内と庭の大掃除をして)久しぶりに開け放たれた、starnetZONEの空間に、良い空気が流れました。
陳美霞(チェン・メイシャ)さんからは、工藝(クラフト)による地域振興のプラットフォームとして事業を展開している会社C house の事業の中でもメインとなる4つのブランドの、立ち上げの背景や経緯、方針、実施内容、大切にしていること・・・を詳しくお話いただきました。2枚だけ、陳さんの講演スライドから引用させていただきます。

食のブランド:丁厨房 台湾麻と綿の衣服ブランド:茶衫:cha-shan 
工藝技術の次世代への継承を担う研修施設の企画運営も:大渓漆芸研究所
「大渓味 DAXI WAY」同じビジョンを持つ、農家、料理人、工藝作家、職人・・・
さまざまな大渓の作り手を繋ぎ、それぞれの仕事を盛り上げ、
そのネットワークで大渓という地域のプロモーションをはかる。

今回の(私の)学び
昨年秋の大渓訪問での学びや気づきを、日本の地方創生や地域振興と言われるさまざまな動きと往来しながら文章化したことを、こちらのブログの後半に掲載しています。>>http://editorialyabucozy.jp/sociological/3259#more-3259

↑それらのことを再確認することができた、イベントや対話の数日間でした。

また、これまで行政からの委託でも自主事業でも、地域づくりの領域で動く時に、次第に大切に考えるようになった「2つ」のことを、陳さんはじめ大渓の(おそらく台湾の他地域で地に足をつけて動いている方々とも)皆さんと「共感しあえたこと」「大切なこととして再確認できなこと」は、大きな収穫でした。

1:手段が目的を追い越さないように、常に目的に対して自覚的であること
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陳さんは、講演の中でも、講演会終了後の下野新聞記者の方へも、再三、こう語っていました。「ブランドを起こすことが目的ではなく、目の前の問題に対応し、その課題を解決するためにブランドを興すのです」
きっと、他の多くの人もそういうでしょう。でも、いつの間にか、手段や演出が肥大化していないでしょうか。方向を見失いことはないでしょうか。私は、そういう自分の反省から、栃木県の地域おこし協力隊の初任者研修などで、若い世代にお話しするときに「目的>手段 手段>目的」という不等式を用いて話をしています。目的に自覚的であり続けること。大切ですね。
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2:打ち上げ花火に惑わされるな
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今回の皆さんの滞在中の後半(離日の前日)、今後の交流プランのためのミーティングの時間を設けました。その席で、地方でモノゴトを興す際に、行政の首町の考え方に左右される場合もあるよね・・・みたいな話題の流れから、陳さんが、ジェスチャーで、半分だけ開いた掌と指を下から上に向けて動かしながら「花火、花火。ダメね」と。日本でも、多額の予算をかけて、いったいどんな効果があるのな謎の事業を行政(主に首長の意向で)主導で行われることがあり、「打ち上げ花火」と喩えられていますが、台湾の方々も同じように比喩として花火を使う!!「そうだよね、そうだよね」と頷きながら、これには、軽い感動を覚えてしまいました。
C houseのプロジェクトの一つ「大渓漆芸研究所」の、試行錯誤を繰り返しながら、改善点は改善し、次世代育成を続けている取り組みなどは、花繋がりで例えるなら、毎年、自ずと花が咲き実がみのるための土壌をつくり続けていること。一年草ではなく、多年草のための土壌づくり。年齢を重ねるにつれ、私自身の取組みに必要だなあ(つまりたりてない)と感じていることもあります。

さて、関わってくださった皆様、ご参加の皆様、いかがお感じになったでしょうか。お会いする機会にでも、またご感想など教えていただければ幸いです。
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おまけ
桃園市大渓は、このブログの「勝手姉妹郷プロジェクト⑴」でも書いているように、台湾の東部に連なる山々から切り出す木材を、市街を流れる「大漢渓」という河川で運搬(船で)し、そこから栄えてきた街。
木材の切り出し、舟運。あ、もしや、これは、今、民謡のお稽古で、簑田が唄っている「日向木挽唄」と、高田純子女子が唄っている「鬼怒の船頭唄」の世界! ということで、この2曲で歓迎せねば!と、初日の夕食交流会で、簑田・高田、唄いました。お配りした歌詞カードの翻訳は、Google先生で、多分、部分的にとんでもない方向に行っちゃっていそうですが、客人たちには好評でした。「これは、大渓だ!」と言ってくださったり、胸に手を当てて「ここに、よかった」と言ってくださったり・・。いやあ、民謡も最強のコミュニケーションツールです!