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ブランディング事業、
チームで考えていくための
道筋を組み立てる

2019年9月、
新しい観光戦略(コト消費・着地型観光への転換)に基づく、益子町のブランディング事業を企画立案していく、官民協働の「ブランディング部会」が発足し、その座長を努めました。
それから1年をかけて、ワークショップや意見交換を重ね、新型コロナウィルスの感染拡大による中断もありましたが、2021年1月には、どうにか形になりました。
ここでは、その「形にしていく道筋」を振り返り、紹介します。


ブランディング部会の構成は、
住民主体のブランディング部会の構成は、個人事業主を中心に、住民が7名、観光商工課や関係人口創出担当の企画課など関連部署の職員が4名。
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ブランディング部会の任務は、
観光戦略会議で定められた、将来ビジョン「幸せなライフスタイルの共有」、新しい観光のコンセプト「日々の益子を暮らすように旅する」に基づき、益子の魅力や価値を再整理して、町内外へ伝えるツールを企画立案すること。そして、着地型観光の「体験&交流」の官民問わず大小問わずの情報を、一元化して伝えるポータルサイトの企画立案を行うこと。
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さて、どのように進めるか?
これまでに、日光市の定住促進、益子町の移住促進、宇都宮市釜川エリアでの地域ブランディング・・・などの取りまとめを担当してきましたが、進め方や手法は、毎回、テーマや期間、メンバーなどによって変えています。
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今回の部会での任務を、時系列に並べると、
1|ブランドコンセプトを整理して、ブランドコピーとビジュアルと企画
2|新しいブランドコンセプトを伝えるアイテムを企画
3|新しいブランドコンセプトのもと、体験&交流ポータルサイトの企画立案
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このポストでは、上記1について、コピーとビジュアルができるまでの道筋を振り返ります。
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ステップ1|ブランドイメージ構築への考え方の整理
01 時代的な背景と生活者の意識の変化を整理する(2000年以降)
02 時代的な背景も踏まえ、これまでの益子町の事業でブランディングに活か
 せるものは?(それぞれを再評価・再整理)
03 来訪者の価値指標の変容を整理する(何が求められているか?)
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ステップ2|滞在型観光での価値資源の把握と整理:ワークショップ
04 資料として、ひとり1冊の『益子の風土・風景を読み解くプロジェクト基
  礎資料』を持ち帰り読み込みながら資源やキーワードを抽出。
05『ミチカケ』の取材記事や、各自の生業でのお客様との関わりなどの体験な
どをもとに、滞在型観光での観光「価値資源」になりうると考える資源リ
 ストを提出 (最低50個)
06 部員全員から上がってきたリストを、名刺サイズの厚紙に1枚に、1項目
  書き出し、益子の価値資源が書かれたカードを作る。総数、約400枚

07 カードをカルタのように広げ、グループ分けするカテゴリーを決め、その
 担当を決める。担当者が、カルタ取りにように、自分のカテゴリーに合うカ
 ードを集めていく。
08 各カテゴリーごとに「滞在型観光の資源となりうるものの絞り込み」とカ
  テゴリーを担当したメンバーからの感想や意見を発表する。また、それに
  因んだ、実体験でのエピソードを語りあう。
  ▽表に整理したものが、こちら。

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ステップ3|具体から概念化/普遍化して言葉にしていく作業
09 ここまでで、益子に内在する有形無形の「価値資源」を把握と整理が進
  みました。ここからは、一旦、座長の簑田が引き取って、それらから、
  具体→概念化/普遍化という作業で、言葉を束ねて、ブランドコンセプトコ
  ピーの案を作成していきます。
  以下、ブランドコンセプトコピー案の提案書より、抜粋します。
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益子の魅力と価値を表す3つのキーワード
020/10/26提出「益子町としてのブランドアイデンティティ」より

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1創造性 (「生活文化創造主義〜マシコイズム」と名付けます)
工芸・クラフトなどの手仕事だけでなく、ライフスタイル(暮らし方)においても創造性を発揮する人が多い。家、家具、衣服や食の在り方、食や食卓の設え、自然環境の取り込み方など、自ら考え、手を動かし、工夫し、独自の生活を創造しています。
▷都市生活者が、益子で出会う手仕事品や食の背景として、暮らし方・生き方を知ることは、かけがえのない価値との出会いになり、繰り返し訪れる誘引ともなります。

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2多様性
山と平野が出会う里地・里山に、風景も人も店も多様な個性が「共存」する豊かさがあります。単に「多様」なのではなく、それぞれの「個が立つ」多様さと言えます。
▷季節ごとの、地域ごとの、表情が違う風景に出会うことや、それぞれに個性が濃い個人店や、手仕事作家、農家さんなどの人と出会えることは、都市生活者にとって、益子は玉手箱のように思えることでしょう。何度でも開けようと思える「ときめき」は、繰り返し訪れる理由になります。

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3未知性 (「未知の日常」と名付けます)
創造性と多様性の特質から「未知性」というコンセプトを導き出しています。
都市生活者にとって、創造性と多様性を併せ持つ益子の日常は、非日常でも異日常でもなく、自身の日常生活と地続きの上に、まだ「出会えていない」景色として広がっています。これからの時代の「暮らし方」の手がかりに満ちた、新鮮な感動と驚きに満ちた未知の日常として。
また、地域ごとに特色がある風土や景観をもち、職業や生活スタイルも多様な人々が暮らす益子では、住民にとっても改めて気づく「日常」の営みが豊かだと言えます。
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このような整理を経て、(案)を部会で意見交換しながら練り上げていき、ブランディング部会で導き出したブランドコンセプトコピーが「未知の日常へ、栃木県益子町」です。
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担当課が業務委託したアート・ディレクター(須田将仁さん)が、部会でまとめたコンセプトをもとに、素描家shunshunさんを起用して、shunshunさんの益子での取材を経て、メインビジュアルが生まれました。
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観光地のカレンダーあるある!のような写真でもなく、イメージ先行型のぼんやりとした絵でもなく、全く新しい、まさに(具象と抽象を柔らかく往来するような、豊かなイメージで、益子を描いてくださいました。
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◎ブランドコンセプトを伝えるアイテムとしては、
①チラシ ②店舗などに置くノベルティの「栞」 ③各店舗で、商品の梱包や袋などに使えるクラフトテープ(古紙や紙袋の再利用促進)④紙袋・・を制作し、4月に入り、町内の各店舗や施設に配布されています。

◎体験・交流ポータルサイトは、二転三転、紆余曲折、七転八倒(詳細は1万字分ほどの経緯説明を省略)の結果、「ブランドコンセプトサイト」として、3月31日に公開しています。 
https://mashiko.town

主なコンテンツは、
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about|未知の日常、益子を知る26の視点
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たとえば「どんぶりの余生」「てまひま」「こねる人」など、益子という土地に楽しみながら深く分け入るための、26の「視点」をコラム的にご紹介しています。ブランディング部会のワークショップから形になったエピソードばかり。
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library|ウェブブック:益子の人、暮らし、風土を読む
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2013年から2018年にかけて年に2回、計10冊発行された、益子の人と暮らしを伝える『ミチカケ』の全巻全ページ!
土祭2015の公式ガイドブック『土祭という旅へ』より「濱田篤哉の庭」「日下田正の水」「加守田昌子の山」、そして、スケッチと写真と文章で伝える益子の風景コラム9作。
これらが全て、ウェブブックとしてお読みいただけます。
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 story|益子を伝える絵と言葉について.
ビジュアルを描いてくださった、素描家shunshunさんの紹介と、このサイトの企画立案を担ったメンバーからのメッセージなどを掲載しています。
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最後に
これまで、観光の領域では、非日常(テーマパーク)、異日常(リゾート)というキーワードが使われてきました。COVID19の蔓延する世界で、さまざまな意味で、日常こそが未知である、と私たちはようやく気づいてきたと思います。
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そしてまた、住民主体のワークショップで導き出した「日常」という言葉は、何も「外」に向かってプロモーションとしてのみ発せられるものではありません。「内」に向かって、つまり「町政」に対してのメッセージでもあります。地に足をつけて、日常こそを大切に。主権は、個々の日常にあります。