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新刊の紹介
「緊急出版」から1ヶ月。
今なお「米軍廃棄物」の
放置/汚染が続く
世界自然遺産登録、
沖縄やんばるのドキュメント

この記事は、特に・・・
●自然環境保護、森づくりの活動に尽力されている友人知人の皆様へ。
●地方創生やら地域づくりやらの領域で、地域の未来を真剣に考えている友人知人の皆様へ。
●自然・社会・経済の調和に基づくSDGsを標榜する企業の皆様へ。
●世界自然遺産ツアーが夢だと語ってくれた若い友人へ。
●沖縄戦に関心を持ち学び続ける年長の友人知人へ。
●表現の源に「自然」を据えるというアーティスト各氏へ。そして、
●私といろいろご一緒していただいている寛容な友人知人の皆様へ。
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2022年9月11日「民草出版」より発行
『抵抗 -国家という暴力との闘い』
著者:中村之菊
文章・写真:宮城秋乃
編集協力:簑田理香
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ほんの少し簑田が関わっているということだけで関心を持っていただけたら、ぜひアマゾンでぽちりください。収益は印刷製本実費などをのぞいて、ちょう類研究者で生き物たちのために動き続ける宮城秋乃氏の裁判費用や活動に寄付されます。レビューも2つ上がっているのでご参に。 
https://onl.la/a5KqL6t
または、著者である中村氏のサイトからも通販で購入することができます。こちらでは著者による緊急出版の趣旨文もお読みいただけます。
https://returnbase.jp/books/
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以下、少し長くなりますが、以下に本書の紹介を書き連ねます。
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●世界自然遺産「やんばる」2021年7月26日、日本では5番目の登録地として、奄美大島、徳之島、西表島とともに、沖縄島北部(やんばる)は、世界自然遺産に登録されました。.「ああ、やんばると言えば、国頭村と東村の米軍・海兵隊の北部訓練場(ジャングル戦闘訓練センター)や、その返還条件のヘリパッド(ヘリコプター着陸帯)移設工事で様々な問題を抱えているところね」と、想起できる方は、どれほどいらっしゃるでしょうか? 
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私も、益子で、人生の大先輩たちが「標的の村」などのドキュメンタリー映画上映会を主宰してくださった数年前までは、新聞の見出し程度の情報しか持ち合わせていませんでした。
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やんばるは、多様性に富む「生物の宝庫」であると同時に、米軍海兵隊が残した「廃棄物放置ランド」と化しています。
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2016年に「支障除去」が完了したとして日本に一部が返還された北部訓練場の跡地から、今なお、大量の薬莢(やっきょう)、夜戦食の残骸、鉄板、さらには、放射性物質のコバルト60が検出された金属製の部品など、明らかに土壌や周囲の自然環境に「害」となる「廃棄物」が、今なお次々と発見されているという現実・・・。
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それらの「発見」は、研究者の宮城秋乃氏の、とうてい数行では伝え切れないほどの「膨大な時間」をかけた調査によるものです。宮城氏は、2011年の秋、東村高江で、環境省や沖縄県のレッドリストの準絶滅危惧種リュウキュウウラボシシジミの成虫、大量発生を確認したことから、それ以降、やんばるの地に調査・観察に足繁く通うようになります。同年の11月には米軍のヘリパッド基地建設が急ピッチで進むようになったことから、建設予定地の生物分布調査も始め、新しく得た知見を学会で発表し、メディアにも情報を提供し、行政機関へも問い続けるも、一向に事態は動かず。
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宮城氏は次の段階として「行動」へと踏み切ります。いわば「米軍の落とし物/忘れ物として米軍に届けにいく」という行為です。
>西日本新聞 2021/0831[世界遺産・やんばるの森に米軍廃棄物 「生態系に影響」研究者訴え]
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/793379/
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2019年3月、私は、都内で開催された宮城秋乃氏が講師を務めるセミナーに参加しました。ご本人撮影による写真や動画をふんだんに用いたレクチャーで、中でも印象的だったのは、オスプレイの飛行による環境の変化(ものすごい騒音や風圧)によると推測される「ノグチゲラ(希少種・キツツキ科)」の行動の変化が、素人の私にもわかるような貴重な記録映像でした。
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このセミナーは、本書の著書である中村之菊氏の(当時の)団体が主催した学習会で、中村氏も2016年から沖縄に通うなかで宮城氏と出会って以降、やんばるの調査に同行したり、関係機関への情報開示請求を行うなど、事実関係の調査・積み上げを続けています。
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●本書『抵抗』は
状況が一向に改善されないどころか様々な「隠蔽」が続く状況では、やんばるの生き物たちの命がますます危険にさらされていく、という強い危機感で(と私は理解している)宮城氏は、今年の8月26日に次の行動を取りました。
>沖縄タイムス 2022/08/30 沖縄知事選 演説中に薬きょう 自民党県連の告訴状 那覇署が受理
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1015580
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そのことと、そこへSNSなどで湧いてきた短絡的な批判や無知・無理解による暴言などへの「返答」としての(と私は理解している)、中村之菊氏による緊急出版が、本書『抵抗〜国家という暴力との闘い』です。
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本書の構成は、
宮城氏が2013年から続けているブログでの報告のアーカイブの章と、中村氏の補足や考察の章という2本だての構成になっています。緊急出版ということで、中村氏は、AmazonのKDPという「出版のD.I.Y」というかダイレクトパブリッシングを活用されています。このあたりも政治活動家界のパンクスっぽくて粋です♡
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●本書で改めて学んだこと.事実は黒塗りで隠蔽されても、本質から離れたところでの「揶揄」がSNSに溢れても事実は「ひとつの真実」として、そこにあると言うこと。正義は人の数だけ、解釈も人の数だけあるとしても、事実は「ひとつの真実」として、そこにあると言うこと。.事実も真実も、受け売りや、情報のつまみ食いや、切り取りの動画などを「根拠」にしていては、たどり着けないということ。自分の足と手と頭を動かして、自分の時間を使って、フィールドでも文献でも、自分自身の努力と精進で調査を行い、その成果を積み上げることでしか、そこにはたどり着けないと言うこと。
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●編集協力:「支援者」と「当事者」編集協力とクレジットを入れていただいていますが、中村氏がスピード感をもって夜中に緊急に書き下ろしたパートの推敲を行ったに過ぎません。本件での中村氏とのやりとりを見返してみましたたが、私は「手伝いますよ」ではなく「できることがあれば、一緒にやりますよ」と申し出ています。入稿直前の中村氏からの「簑田さんの名前も入れましょう」との提案に、一瞬「いやいや、大したことしていないから」との言葉も浮かんだが、私もこの問題の「当事者であるという責任」の記録として考え直した次第。.日米安全保障条約がもたらす安心や安全があるとするなら、その恩恵に預かっている本土の私やあなたも、その条約に基づき「在日米軍」がもたらす行為全てにおいて「当事者」であるはず。遠く離れた安全な高みにいて「頑張ってください」「応援してます」「支援します」というのは、ちと、いやかなり違和感があるなあと、最近感じています。あらゆる場面で。
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昨年2021年11月、久しぶりに沖縄島最北端の辺戸岬を訪れたら、観光案内所は世界自然遺産関連のプロモーションであふれていた。ポスターの1枚が剥がれ、その下は壁ではなく、また白い紙が貼られていて、なんとかく示唆的だなあと撮った1枚。
先に書いたセミナーで、宮城氏がやんばるで撮影した昆虫のポストカードを購入させていただき、その裏面にいただいたメッセージです。
宮城氏の著作『ぼくたち、ここにいるよ:高江の森の小さないのち』
著・写真:アキノ隊員(宮城秋乃 2017年8月発行

『ぼくたち、ここにいるよ』発行元の影書房による紹介文を転載します。
「沖縄・やんばるの森で暮らす小さな生きものたちを、チョウ類研究者のアキノ隊員が案内する写真絵本。けんめいに種をつなごうと生きている森の仲間たちをオールカラーで紹介。 アキノ隊員は、ヘリパッド建設現場周辺での生物への基地建設の影響を調べる活動が評価され、2017年6月、新崎盛暉平和活動奨励基金で初めての助成交付対象者に選ばれた。日々調査研究活動をつづけながら、やんばるの森を守るためにブログやメディアなどで積極的に情報を発信している」
amazon > https://onl.tw/9qidH94
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貴重な生き物の写真がふんだんに掲載されています。生き物好きな少年少女にも、ぜひ手渡してあげたい1冊です。緊急出版のペーパーバック『抵抗』とともに、多くの人の手元に、意識に、届きますように。