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敵も味方も自分の中に
中村哲さんの訃報に_1
ペシャワール会代表、中村哲さんの訃報に接して
木内みどりさんに続き、歩む道の前に灯っていた希望の灯火が、
またひとつ消えてしまったような、大きな喪失感を感じている。
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著作から、ドキュメンタリー映像から、
そして何より現実の「行動」から学ばせていただいたことは、
はかりしれない。
ここで、いくつか、そういうことを書こうとも思ったが、
2017年2月11日、京都環境文化学術フォーラムに参加して、
中村さんの講演を聞いたときのメモを、そのまま公開します。
たしかに、あのとき、中村さんはわたしたち聴衆の前にいて、
小柄だけど、とても大きく見える躯体を、どことなく所在なげに、
本当は、いまもアフガンの大地にいるのではないかと思うような
そう、ちょっと所在なげに見えながらも、いくつもの大切な、
ひとにとって大切な真理を、きっぱりと語っていた。
第2部のパネルディスカッションの最後に、中村さんが語ったのは
「単にみんながそういうから、そうしよう、そんなことではなく、
これまであった、過去の見識の中にも手がかりはある。
そして、ヘイトは「内」にもある。敵も味方も自分の中にある。
そのことを忘れてはいけない」という趣旨のこと。
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そして今日は、喪失感を抱えたまま、
予定していた映画を観に、定時退社フライング気味で
映画館にかけこんだ。
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森達也監督「 i 〜新聞記者」
私は、まさに、同じ質のメッセージを受け取った。
「国家:政府 対 ジャーナリズム」の話ではない。
ひとりひとりの「私」の中の「敵と味方」の話で、
「i」として、自分に問うこと。
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歩む道の前の灯火が見えなくなったら、また灯せばいい。
「私」も、「あなた」も、いち個人として。
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写真は、中村さんがアフガニスタンの灌漑用水建設で「堰」建設の手本にした、福岡県・筑後川の山田堰。2017年夏に取材・撮影。