布と糸を針で紡ぎ、豊かな表現世界を作り出す、パッチワーク。
宇都宮市で「アトリエ悦」を主宰し、50年ちかく創作と指導を積み重ねてこられた長谷川悦子先生から(娘である星居社・高田純子さんを通して)作品集を作りたいとご相談を受けたのは、2020年秋のことだったかと思います。
ウェブ制作と同じように、まずはキャスティングでのチームづくり。アートディレクション・デザインは、ビジュアル中心の書籍・画集・冊子のお仕事も多い、須田将仁さん(TakuuTuore.inc)、写真は、商品や作品撮影(いわゆるブツ撮り)を基礎からみっちり学んで実践知が高い、柴美幸さん(studio cord)にお願いしました。
私は、須田さんと一緒に構成・台割を考えつつ、長谷川さんのキャリアや、創作や指導を通しての出会いなどを、聞き取りさせていただきながら、文章でも伝える誌面も作成しています。
師との出会い。知的障害を持つ方々の自立支援施設での指導、宅急便で指導を行う生徒の一人が南三陸町に住んでいたことから、2012年から4年間、毎月、登米市の仮設住宅に通って、パッチワークを通しての心の回復をサポートされてきたこと(心の回復が目的というわけではなく、結果的に、そのようなことにつながったという私の解釈です)。人に歴史あり、とは昔からよく言われることですが、まさにその歴史を受け取りながら、100点近い作品に込められてきた「もの」のことを想起します。最後のページ、作品制作中の先生のプロフィール写真には、こんな一文を添えました。
私の右手 思考も感情も望みもすべて、この手によって創り出された。
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ThePleasureOf HandSowing
針を持つ悦び
2021年4月26日 初版
発行:アトリエ悦
アートディレクション:須田将仁
写真:柴美幸
編集:簑田理香