退行感覚

我が家の老犬は、去年まではできたことが
ひとつずつできなくなってきている。

そのひとつが、
ソファにひとっ飛びに飛び乗ること。

もうひとつが
自分のトイレで(大)をすること。

最近では、なにかしらの布が床に落ちていると
そこがトイレだと勘違いするのか、(大)をぽとんと。

老いることは自然の摂理で、退化ではない。

人はどうか。
時代の流れに、老いることを強いられていまいか。

 

出先の商業施設でトイレに入ると、
個室のドアを開けたとたん、突然、便器の蓋がパカリと開く。

用をすまして立ちあがると、
突然、勝手に水が流れて、(小)でも(大)でもきれいさっぱり流される。

(大)を通して、自分の健康状態を目視確認するひまもなく。
指差し確認するひまもなく。
自分の体の分身に別れを告げるひまもなく。

自分の手で便器の蓋をあけることもできず、
自分の手で自分の排泄物を流すこともできない。

技術革新という進化の中で、退行していく私たちの生。

昨日できていたことが、今日はできなくなる。
そのことよりも怖いこと。
昨日は気づけたことに、今日は気づけなくなることではあるまいか。

ましこのうた|作品情報

2018年9月1日に発売を開始した
「ましこのうたDVD&PHOTOBOOK」について

益子という土地で積み重ねられてきた、風土と人の営みの関係性。それは、私たちの眼の前に「風景」となって、暮らす人の姿とともに現れています。その風景の中へ分け入り、懐深いところに在る「土地の姿」に感じるものを、誰に頼まれたわけでもないのに(!)、行政や経済活動の領域からは少し離れたところで、「自主制作」として「ましこのうた」を世に出します。

発起人は、地域編集室の簑田です。益子町の事業として手がけてきた「土祭2012」「益子の風土・風景を読み解くプロジェクト」「土祭2015」、『ミチカケ』を通して、土地と、土地の人たちから、多くのことを受け取りました。教えられたこと、受け取ったこと、それらを、どのような形で土地や人にお返ししていくか、そのことは、今後も課題であり続けますが、その延長上で、シンガーソングライターの石塚明由子さんとの出会いがありました。栃木県地域振興課の委託を受けて2016年に実施した「はじまりのローカル コンパスツアー@益子」を、ヒジノワメンバーでコーディネートし、参加してくださった石塚さんが、益子の手仕事の作家や農家さんとの出会い、そして「土祭風景遠足@コンパス版」での体験をもとに「益子の歌」を生み出してくださいました。その歌声から吹く風に押され、今回の企画が生まれました。
 
石塚明由子さんが「歌」で、
高松泰さんが「音」で、
長田朋子さんが「映像」で、
須田将仁さんが「デザインの思考」で、
そして簑田が「企画」と「言葉」で参加し、
また、江藤有希さん、須藤ヒサシさん、Memi Cotansanというミュージシャンの方々、
地域の方々も(コーラスで)演奏に参加してくださり、
さまざまな人と人の繋がり、人と土地の重なり、時間の積み重ねの中から、
本作品の主役である「益子という土地」を表現した作品が生まれました。

「うた」と「風景」に導かれて、いのちの環の中へ。

このキャッチコピーのもと「ましこのうた」は、
益子や都内でのレコ発ライブをスタートしています。
あなたの日々の暮らしの小さくても大切な道標になれば幸いです。

ましこのうた DVD & PHOTOBOOK
特設サイト


作品詳細

2,500円+税
DVD|約18分
歌|石塚明由子 ⒈ 陶芸家の食卓 ⒉ 益子の歌
音|高松泰|益子の自然の声
画|長田朋子|益子の風土・風景・人の暮らし
石塚明由子(作詞/作曲、ギター、ヴォーカル)須藤ヒサシ(ウッドベース)
江藤有希(ヴァイオリン) Memi Cotan(マンドリン) 

コーラス隊
岡崎多実子  菊島幸子  木村文子  菊池美紀 栗原節夫 辻弘子
永見知美 羽持真弓 古川小道 松下曜子 松永レミ 
宮田美佐子 武藤俊郎    矢津田好美 横溝夕子 

撮影協力
pejite  ヒジノワcafe&space つづり食堂  広田果樹園 
日下田藍染工房 アトリエCRIU  山崎農園  成井窯

BOOK|A4変形 オールカラー48ページ
画|長田朋子 詞|石塚明由子 詩|簑田理香
楽曲の音源をダウンロードできる情報(QRコード)も掲載しています。

企画制作・発売元|地域編集室 簑田理香事務所
販売協力|株式会社プレムプロモーション

「風景と、未来の物語」⒈企画監修という仕事

2年前の秋に、益子町の南部の田園地帯にできた道の駅ましこ。
道の駅には珍しく、企画展(展示販売)のスペースが作られています。

7月から10月初めにかけての展示の企画・監修を道の駅ましこより委託され
企画展「風景と、未来の物語|前期・ミチカケ展|後期・土祭展」を立ち上げています。

この企画について、3回に分けて記録を残していきます。
今回は、「企画・監修」という仕事と企画趣旨ついて。
 *若い世代の皆さんの参考になれば幸いです)
 *写真は「ミチカケ展」会場で流していたスライドの扉。
  ミチカケ10号特集より。撮影:佐藤元紀


⒈企画趣旨とタイトルについて

担当者から相談があったのは、今年の3月。
4回目の土祭が行われる今年、
土祭と、土祭から生まれた『ミチカケ』を基にした
アーカイブの企画展示を行いたい、ということでした。
打ち合わせの記録を振り返ると、道の駅から提示されたのは、
・ミチカケをもとにした展示は、移住定住促進の一助として。
・土祭を基にした展示は、土祭での田野地区の展示のテーマに
「農業と地域に息づく伝統文化」があるので、
風土風景を読み解くつどいも開催したい。

・・・ということでした。

どちらも「過去」の記録をもとにしたアーカイブ展を期待されたわけですが、

そこにどのような価値をつけるか、まさに「編集的思考」の考えどころ。
単なる過去の再編集の場を作り上げてもそこから何も生まれない。

過去のアーカイブから、どのように未来を描けるか?です。
実は、その視点での「編集」を行ったのが
3月に発行した『ミチカケ』最終号「風景と、未来の物語」でした。
土地と人との関係性(風土形成)と、その進展への願いについて
私が土祭2012/土祭2015、益子の風土・風景を読み解くプロジェクト、
そしてミチカケ全10号を形にしていく過程で、
この土地から地域の方達から学ばせていただいたことを
1つの集約という形にした(つもり)の特集です。
軸はひとつです。

道の駅での企画展示の全体タイトルを
「風景と、未来の物語」とさせていただきました。

企画内容については、道の駅ましこ特設サイトを御覧ください。


⒉構想を形にするまで

4月に入り、担当者と企画内容の組み立てについてのやりとりが始まりました。
企画監修というお話ではありましたが、

結果的には、企画・コーディネート・制作・監修という仕事量になり
しかも、非常勤の常勤という大学勤めの時間外(平日夜と週末)を
かなり費やさざるを得なかった、とてもシンドイ夏となったことは
近しいみなさんご存知の通り。
(なんとか夏を生き延びております!)

夏を生き延びた記念に、この記事のメインとして、

あちらこちらで、いろいろと「不具合」も察知する夏でもあり
相談も持ち込まれる夏でもありましたので、
私がものごとを形に落とし込んでいくプロセスを以下に公開します。
次世代の若い皆さんの参考になれば幸いです。

ざっくりとした、あるいは、ぼんやりとした「構想」を
形にして、具体に落とし込んでいく。
その過程に、どんな道筋を組み立てることができるか?
ちょっと丁寧に「可視化」できる部分のみを公開します。

PCでは、案件ごとにフォルダを作成いています。

道の駅ましこ企画展示のフォルダの中は、このように整理しています。
(ほかの案件でも、仕事内容にもよりますが、ほぼこれが基本)

私の場合は、基本的に3つのステップで、
その段階で必要な書面を作成しながら関係者と共有して進めていきます。

①構想メモ・趣意書の作成・文章化
 ・発注者の依頼内容を受けて、
  どんな人に対して・何のために・何を・どのように・どんな意味づけで行うか? 
  文章化して依頼主と共有し、確認し合います。
 ・この段階でアートディレクターとも相談し、コンセプトに合致するメインビジュアル
  や宣伝媒体の方向性を決めていきます。

②企画書
 ・企画趣旨/目的/期待される効果/展示やイベントのコンテンツ一覧と各概要/
  制作体制/スケジュール/予算…などの項目で何回も改訂し、
  紙やPCの上から、会場の上に「立体化」していきます。。
  依頼主と合意を得られたところから、作家や関係者に企画趣旨を説明したり
  参加依頼を始めます(道の駅担当者と分担)

③実行計画書(コンテンツごとに工程や分担体制なども計画)

ここ、大切です。
ざっくりとした企画案だけで、しかも趣旨やコンセプトも関係者で理解がバラバラなまま、
共有される計画書もないまま、各自が成り行きで、
そして個々の好みや感覚で好き勝手に動き出すと…、どうなるでしょうね。

本来なら、企画監修の立場でここまでやらなくてもいいはずですが、
今回は諸般の事情で、企画監修者(兼)「担当者」のようでもありました。

1つの実行計画書の部分を貼っておきます。ご参考までに。

 

3企画趣旨文|道の駅特設サイトから転載

外向けの発信で、イベントや企画のことを伝える時、
その文章は、しっかりと組み立てられた趣意書や企画書があれば
それをベースに書くことができます。
以下、道の駅特設サイトから転載します。

——–

風土に育まれる感性が生み出す、手や心の仕事。
プランニングディレクター 簑田理香

伸びやかでやわらかい、益子の風景に溶け込む道の駅ましこ。
その大屋根の下で、『ミチカケ』と「土祭」をもとにした企画展を行います。

『ミチカケ』は、2013年9月に創刊し、2018年3月に終刊するまで、
年2回のサイクルで益子町が発行していた益子の人と暮らしを伝える雑誌です。
そのアーカイブをもとに、「手仕事」と「移住」をテーマにして、
展示や作家の作品/商品の販売、関連イベントを開催します。

「土祭/ヒジサイ」は、2009年に生まれ3年ごとに開催する、
益子の風土に根ざした新しい祭りです。これまでのアーカイブ、
特に3回目の土祭の基礎とするために2014年から1年半をかけて
全町に渡り地域の方達と進めた「益子の風土・風駅を読み解くプロジェクト」を基礎にして、
「風景」と「未来」をテーマに、展示や関連した作品/商品の販売、イベントを開催します。 

 

「土祭」と「ミチカケ」のアーカイブ展の企画、というお題を道の駅ましこからいただき、
まず思い描いたことは、「単なる過去」の編集ではなく、
過去・現在から、「未来へ」へと
思いや考えを馳せるきっかけとなるような編集を、ということです。
「風景と、未来の物語」というタイトルは、『ミチカケ』最終号の特集テーマでもありました。
私たちが先人から受け継いだもの、
益子という土地で積み重ねられてきた風土と人の営みの関係性は、
私たちの眼の前に「風景」となって、暮らす人の姿とともに現れています。
その風景の中で生きる私たちの「今」の営みが、「未来」の風景を形づくることになります。
私たちは、風景からどんな風土を読み解き、そこからどんな感受性を育み、

なにを生み出してゆくのでしょうか。どんな未来をつくってゆけるのでしょうか。

 

風土に育まれる感性が生み出す、手や心の仕事。
ぜひご来場いただき、「これまで」の積み重ねを活かす、「これから」のあり方についても、
農作物や工芸の品を「つくるひと」も、「つかうひと」も、
一緒に考えてゆける空間となれば幸いです。

益子町の事業として展開した「土祭」も「ミチカケ」も、
ダイレクトに販売に繋がる販促企画として立ちあげたものではありませんが、
ものづくりの町としての風土や背景などを多視的に伝える試みを続けてまいりました。
今回の企画展示では、そういった「基礎」の上に、
作り手たちの作品/商品を、知恵や考え、生き方・暮らし方とともにしっかりと伝えながら、
益子の手仕事の価値をお届けできればと思います。

ご来場をお待ちしています。

それでは。

次回は「ミチカケ展」について。