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ミチカケ 
たとえば30年先のために

創刊趣旨|益子の人と暮らしを伝える『ミチカケ』企画制作
デザイン|TRUNKさん 写真|矢野津々美さん、佐藤元気さん

2012年の12月に企画書を提出し、2013年9 月に第1号を発行した、益子の人と暮らしを伝える「ミチカケ」は、今月20日に第7号が出来上がります。この夏は、ミチカケについて立て続けに2つの取材を受けて、あらためて創刊企画書を見返したりしていました。前回に続いて、今回はミチカケの輪郭が見え始めたいきさつについてまとめておこうと思います。


創刊の背景

2012年12月に企画書を提出し…と書きましたが、ミチカケは、2012年秋に益子町が開催した「土祭(ひじさい)」というアートイベントから生まれた、とも言えます。

益子町は、東京から北東に車や電車で約2時間の位置にある、窯業と農業の町です。窯業のルーツは江戸末期にあり「益子焼」の産地として窯元や販売店が多く立ち並び、春と秋の「陶器市」は多くの観光客で賑わいます。
観光の町として、これまでにも、イベントの開催やツアー客の呼び込み、首都圏への営業など、さまざまなプロモーションを続けてきていますが、2009年に始まった、益子町主催のアートイベントの祭り「土祭(ひじさい)」(2009/2012/2015に開催)を通して、新しいプロモーションの考え方が加わりました。
「土祭」は、農業と窯業の町として、その基盤となっている「土」を中心に、益子町の「風土」の魅力を基礎にして、アート作品の制作と展示や、風土にちなんだテーマでのセミナーや来場者が参加できる体験イベント、音楽祭や食のプロジェクトなどを約2週間に渡って開催するものです。
アート作品の展示は、メインストリートだけではなく、路地裏や中心地から離れた里山の地域などの古い空き家や神社、空き地などでも行い、来場者が益子という土地のさまざまな表情を楽しめるように会場を設定しています。
2012年の土祭で行った来場者アンケートに寄せられた声では、首都圏で働く30代を中心に「これまで観光で訪れた時にはわからなかった、益子の魅力が感じられた」「町の風土と作品が作り出す世界観に共感した」などの声が多く寄せられました。

私は、もともとフリーランスのエディター・ライターですが、この「土祭」を担当するために、2012年2月から2016年3月まで、益子町役場の臨時・任期付職員として仕事をしてきました。
2012年の土祭での来場者の感想などの手応えから、益子がもつべきメディアの「構想」が輪郭を帯びてきました。
お店で何かを買い、カフェやレストランなどで美味しいものを食べ、風光明媚な景勝地やレジャー施設で過ごす…など、
消費行動が中心の一般的な観光PRや、1年365日のうち、いったい何日イベントやってるの?というイベント重視のありかたで、いったい「何が」伝わるのだろうか…。一時的な「煽り」では持続性がなく、将来的に立ち行かなくなるのではないか。一歩踏み込んで、益子という土地や風土性がもつ潜在的な力を引き出し、土地がもつ本質的な魅力や、その土地で暮らす人々と風土の関係性、そして、暮らしのあり方の魅力を、外に向けて伝えていくことが、たとえば30年先の私たちの町にとって、必要なことではないか、と。人と土地や町のつながりも、人と人の信頼関係をどう築いていくか…と、基本は同じではないか、と。

雑誌やウェブサイトでの情報発信のあり方についても思うことがありました。
益子町は観光地ですから、都内に本社があるメジャーな雑誌などで紹介されることも多くあります。じっくりと取材した丁寧な記事もありますが、似たような表面的な紹介が繰り返されることも多く、そのように中央のメディアに「情報も消費される」だけでは、ブームという波に翻弄されるだけです。益子のような町は、じっくりと町の内側から伝えていく、独自のメディアを持った方がよい…と考えたのです。

「と考えたのです」、と、さくっと書きましたが、12月に企画概要を提出してから、さらに半年をかけて、編集方針や仕様、構成案などを練っていきました。写真をお願いすることにしていた矢野津々美さん、食に関する記事をお願いしようと考えていた(当時観光協会勤務の)池田絵美さん(都内でオーガニック系の草分け編集部勤務経験あり)も創刊準備チームに入ってもらい、本のタイトルなども3人で出し合いながら決めていきました。(「ミチカケ」は矢野さんの案です)

ちなみに3人で出しあって、ボツにした、雑誌名はですね……
「森の庭」「あめつち」…えええ、それからなんでしたっけ。もう「ミチカケ」しかありえませんね。
後日、益子が誇る人間国宝・濱田庄司のお孫さんにして益子参考館館長の濱田友緒さんに
「焼き物の町の雑誌の名前で<カケ>がつくのは、いかがなものでしょうか」と、苦笑いをされましたが。

どんまいミチカケ!

月は「欠け」ていきますが、また満ちてきます。
焼き物も「欠け」ることはありますが、そうしてまた土に還るのです。
ミチカケは、健やかな未来への道を「駆け」ていきましょう。

次回は、企画書のお話です。

土祭ウェブサイト → こちら
ミチカケ公式サイト → こちら