ましこのうた
祝レコ発メッセージ
シンプルに、まっすぐに、胸に届く歌と映像。
とちぎユースサポーターズネットワーク 古河大輔
「あなたの暮らしに、ローカルを10%プラスする」をコンセプトに、
都市部に住みながら地方と関わりをつくる栃木県主催のプログラム
「はじまりのローカル コンパス」。
その益子編に石塚さんが参加したのが、2016年の秋。
早いもので出会ってもうすぐ2年になる。
「益子が好き。益子焼が好き。益子のつくり手が好き」。
参加のきっかけは、とってもシンプルでまっすぐ。
そんな石塚さんがシンガーソングライターだと知ったのは、プログラムも中盤のころ。
YouTubeで検索して、PV「ほんとうのこと」を見つけた。
スマートフォンから流れる石塚さんの歌声は澄み切っていて、
忙しく仕事をしてカリカリしていた僕を、なんだか優しい気分にしてくれた。
この頃、仕事中の音楽は、もっぱら石塚さんの音楽だったのを覚えている。
「益子を舞台に歌をつくろうと思う」と話してくれた時は、無性に興奮した。
わざわざ東京から宇都宮までギター運んでくれ、プログラムの最後に、
まだまだ未完成だと前置きしてうたってくれたのが、この「益子の歌」である。
石塚さんが、益子のひとたちの暮らしや生き方に触れることで産声をあげたこのうたは、
その後、簑田さんやたくさんの益子のひとたちの力をかりて、
こんな素敵な形で世に出ました。
こうしてこの音に触れられて幸せです。こ
の音を共有するみなさんに、益子の風が伝わりますように。
—
standardな特別
建築家 加藤誠洋
「益子の場合、来るものは拒まず。自由さがあるのね。だから焼き物が健康なんです」
「ただし自由を得るには、踏むべき過程はきちんと踏むことが必要なのです」。
これは益子の陶芸家が雑誌のインタビューに答えた一文である。
友人であるシンガーソングライターの石塚明由子さんが益子の歌を作った。
発売と同時に届けられたDVDから流れる益子の“普通の生活”とともに流れる歌声を聞いて、
彼女を知っている人は少なからず驚いたのではないか。
DVDは益子の風景を捉えた長田朋子さん撮り下ろしのブックレットに納まっている。
タイトルは「ましこ の うた」。
かな表記や、文字に空いたスペースが意味深く思えるのは
編集を簑田理香さんがされているからで、
彼女がギミックなど使うはずがないからだ。
映像とともに歌声は流れる。
確か5、6年前、水戸の小さな会場で赤いスカートにギター1本抱えて
唐突にスルッと歌い始めた声の直截さが印象的で、それ以来僕らは友人だ。
もともと焼き物好きだった彼女は震災後、益子に通い始めた。
何が彼女に益子通いをさせたのか知らないが、
何か益子に受け止めて欲しかったことがあったんじゃないかと、そっと思っている。
普通に見える風景、普通に見える生活、普通に暮らす人々。
外から見たらなんでもない益子の普通が普通じゃないってことをわかっていなければ
ここまで普通の益子を映像と歌で表現することはできないだろう。
そうして普通の益子に馴染んだ彼女の歌声は抑制のききかたに変化を及ぼし
以前にも増して直截さが心地よい。
もちろん初めて彼女を知るものにとっても、スッと普通に心地よさが広がるはずで、
それは普通の特別さが染み入るからであろう。
クレジットを見ると過程を踏んだ自由な益子の友人の名前がたくさんあって、
そんなわけもあって、僕は強力にこの歌を応援する。
写真:長田朋子